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森川(記者)

本を売り、本を読む日々。
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散 漫 帖

本と映画と妄言と
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マスコット ナチス突撃兵になったユダヤ少年の物語(マーク・カーゼム/ミルトス)

 何の前触れもなく、オーストラリアの実家から息子(著者)が暮らすオックスフォードにやってきた父親が、去り際に言い残した謎の言葉「パノク、そしてコイダノフ」が事の始まりだった。「恐ろしいことが起こったのだ」と、50年以上の沈黙を破り父親が語り始めたのは、幼い頃ナチスの突撃兵に家族を含む村人を虐殺され、一人生き残り森をさ迷っているところをナチスの兵士に発見され、何とユダヤ人でありながらナチス突撃兵として行動を共にしたという数奇な体験であった。
 果たして父親の語る過去は本当のことなのか、また父親が探したいと願う「自分が生まれた村と、自分の本当の名前」は見つけられるのか、親子は手探りでルーツを辿るのだが…

 レビューサイトで紹介されていて気になった本。
 ノンフィクションだが、数奇としか言いようのない父親の人生といい、父親の過去を遡る過程で起こる出来事といい(イスラエルの諜報員が接近してきたり、何者かに家を襲撃されたり、あり得ない偶然が重なったり)、事実は小説より奇なりを地で行く内容に一度読み始めたら止まらなくなってしまった。

 冒頭から語られる虐殺や、ナチス兵と行動を共にするようになってからの出来事は、読みながら何度も呆然としてしまった。あまりに数奇な父親の過去には、オックスフォードのホロコースト研究の専門家ですら疑ったほどだが、父親が終始持ち歩いていた当時の写真、新聞記事、身分証明書、手紙の類がかろうじてそれが本当にあった出来事であると証明する。もし、これらの証拠がなければ息子ですら信じなかったかもしれない。
 遠い過去、しかも歴史的な事件を立証するのは本当に難しいことなのだと痛感する。ましてや、負の歴史に関しては、それに関わった人間の利害関係によって事実はいくらでも歪められてしまう。

 「残酷な運命だ。私は毎日、なぜ私にこのようなことが起きたのか、なぜ私は生き続けたいと決意したのか、と自分に問いかける。時には、目覚めなければよかったのに、家族と一緒に墓場へ行っていた方がよかったのに、と思う。私が生き延びたことに、どんな意味があるのだろう、と思う」(P204)

 父親が過去の恐ろしい体験を語ったのは、自分の家族や村人たちを抹殺し、自分の運命を狂わせた連中を断罪したいから、という思いだけではない。あの時、虐殺された村人たちと共に葬られた「本当の自分」を探し出さねばならないという、強い願いのためでもある。凄惨な記憶と向き合いながら、「私は一体どこで、誰と暮らした、何者なのか?」とひたすら問い続ける姿に、人が生きる上で「自分の歴史」がどれほど重要であるか考えさせられる。
 その熱意が報われるように様々な偶然が重なり合っていく様は、もう本当にこれは現実の話なのかと思ってしまうのだが、現実とは案外そういうものなのかもしれない。ただただ、圧倒される一冊だった。

Posted by pareidolie21
その他の本 / 22:43 / comments(0) / -
放浪の天才数学者エルデシュ(ポール・ホフマン/草思社文庫)
 全財産を詰め込んだトランク一つを引っ提げて、世界中の数学者仲間の家を放浪しながら生涯に1500余りの論文を発表した、偉大なる天才にして手に負えない奇人エルデシュ。数学を愛し、数学に愛されたエルデシュの人生と、20世紀の数学者たちについての評伝。

 学生の時に読んだ本ですが、文庫化されていたので購入して再読しました。
 私自身は数学が大の苦手で、出来れば数学とはなるべく関わりたくない! 「数学」という文字を見るのすら嫌! というくらいでしたが、この本を読みエルデシュという人を知って以来その考えが大きく変わりました。
  数学者というと、一人部屋に閉じこもり、俗世とは関わりを持たずひたすら数学の難問に取り組んでいるような人、を思い浮かべがちですが、エルデシュはそんなイメージからはかけ離れた数学者でした。
 他の数学者に出会えばすかさず数学議論をふっかけ、相手が食いつかずにはいられない問題を出し、共同論文を書く。「その方が、よりエレガントな解が得られるから」と。戦争、冷戦で祖国に帰れなくなってからは(エルデシュはハンガリー生まれのユダヤ人だった)、世界の数学者仲間の家を転々として生涯を過ごした。
 性格もかなり独特で、いうならば神童のまま大人になった人…といった感じです。しかも、かなり手に負えない神童。生活に関しては何も出来ない、嫌なものはとことん嫌、落ち着きはないし、偏屈だし、わがままだし…と、エルデシュの周りの人たちは相当振り回されています(笑)。その反面、子どもたちのことを第一に考えていたり、弱い立場の人を放っておけなかったり、財産は寄付するか若い数学者たちを援助するために使うかしたり…そして何より、数学をとことん愛していた。だからこそ、エルデシュの周りには人が絶えなかったのかもしれません。

 この本には、20世紀に活躍した数学者についても書かれています。そしにしても、20世紀って物凄い天才揃いの世紀だったんですね。英国数学を不動のものにしたH・G・ハーディ、インドの鬼才ラマヌジャン、不確定理論で数学界に激震を与えたゲーデル、フェルマーの最終定理を証明したワイルズ等々…。ただ、彼らの生涯は数学に関わったばかりに身を滅ぼしたようなところもあり、「数は魔物」という感じもします(その辺りは、マーカス・デュ・ソートイの『素数の音楽』(新潮クレストブックス)に詳しく書かれています。エルデシュも紹介されています)。

 途中、数学の専門的な話も出てきますが、数学が苦手な人でも楽しく読める本です。というより、数学は苦手だと思っている人にこそ読んで欲しい本です。自分が苦手とする分野でこんなにも楽しく情熱的に生きた人がいたことを知ったのは、衝撃的な体験でした。
Posted by pareidolie21
その他の本 / 12:34 / comments(0) / -
災害の襲うとき(ビバリー・ラファエル/みすず書房)

 自然災害、あるいは事故、事件などによって突然命の危険に直面したり、また凄惨な状況に居合わせたり、親しい人や住居、財産を失った人々の精神はどのような危機に晒されるのか、またその危機を最小限に抑えるにはどのような介入が有効か。多数の事例を元に、災害が起きる直前から災害が過ぎ去った後々に渡るまでを、時系列毎に分析した書。

 幾つかの災害心理学に関する本で、必ずと言っていいくらい挙げられていた本。
 書かれてから三十年近く経つため、紹介されている災害や事故の事例が若干古いのがやや難だが、突発的な災害(この本では事故や犯罪、戦争も含む)が人間にもたらす危機は基本的にこの分析からそう外れることはないのかもしれない。ただし、リスクの高さは災害そのものよりも、それ以前に個人がどのような環境で生活していたかに因るので、同じ状況に置かれた全ての人に同じようなリスクがあるとは一概に言えない。その辺りの事例も詳細に分析している。また、直接被災していなくても、被災地で救援活動やボランティアに従事した人も、被災者と同じくらい精神的負担を被る点にも言及している。
 一般向けではないけれど、災害心理に関心のある人、災害ボランティアとして被災地に行く予定のある人は読んで損はないと思う。

Posted by pareidolie21
その他の本 / 19:36 / comments(0) / -
パリのギャルソン(安田知子/新紀元社)

 タイトルそのまま、パリのギャルソンの本です。
 由緒正しい老舗カフェや新しめのレストラン、カフェ、ブラッスリーのギャルソンの写真が満載。
 パリのギャルソン、と言えば、昔見たその名も『ギャルソン!』という映画を真っ先に思い出します。イヴ・モンタン主演の。白シャツに黒ベストにネクタイ、腰に巻いている長いエプロン(タブリエ)が一般的なのかと思いきや、パリではちょっと古いスタイルと思われているらしく、今の流行りは前掛けエプロンタイプなのだそう。あと、オーバーオールに赤いポロシャツに帽子という、マリオスタイルのギャルソンもいたり(笑)。伝統的な制服から、新しいスタイルまで、さまざま載っていて服装の参考にもなりそう。
 しかし…一体、誰に向けて作られた本なのか(笑)。ともあれ、ギャルソンの制服が好きな人、オッサンが好きな人、パリのカフェやレストランの雰囲気が好きな人は見ていて楽しい内容です。

Posted by pareidolie21
その他の本 / 17:26 / comments(0) / -
チャリング・クロス街84番地(ヘレーン・ハンフ編/中公文庫)
 アメリカに暮らす若いシナリオライターの女性(著者)と、ロンドンにある古本屋の店員が二十年間交わした、手紙を集めた本。

 ある作家さんのオススメコーナーに置いてあって気になった本です。
 裏のあらすじを読んだ時は、古本屋に届いた色んな人からの手紙をまとめた本だと勘違いして、読み始めた頃はちょっとハズレかなーと思ったのですが、そのうちあまりの素晴らしさに読み進めるのが勿体なくなってしまいました。
 最初は単に探している本があるかを尋ねる内容で始まった手紙が、いつしかそれだけには留まらない人と人との繋がりを育んでいく。無類の古本好きである著者は、手に入った本が素晴らしければ惜みなく褒め、駄本であれば容赦なく(しかしユーモアも混ぜて)駄目だしをする。古本屋の店員たちは、そんな彼女の要望に応えるのが刺激的で楽しかったのだと思う。職業人として、また本好きとして。
 途中、食糧難のロンドン(50年代初頭まで配給制だった)に著者が食料や衣料品を送る話が何度か出てくる。ちょっとおせっかい? な気もするけれど、送られた方も心から感謝はするけど卑屈にならないところが良い。その代わり、クリスマスには素敵な刺繍入りテーブルクロスをプレゼントする(そのテーブルクロスにも、またストーリーがあったりする)。素敵なやりとりだなぁ…と羨ましくなる。
 最初の手紙から、気が付けば二十年。その間に、政治も変われば、手紙をやり取りしている当人たちの環境も変わっていく。そんな中で変わらずに続いた彼らのやり取りは、本当に奇跡である。

 追記…この話を元にした映画もあるらしい。しかも、ロンドンの古本屋の店員役(多分、主にやり取りしていたフランク氏)はアンソニー・ホプキンス! ぴったり過ぎるー。こちらも気になります。
Posted by pareidolie21
その他の本 / 23:27 / comments(0) / -
幸福な無名時代(ガルシア=マルケス/ちくま文庫)
 新聞記者時代に書かれたルポやコラムを集めた本。

 政治的に動乱期にあったベネズエラに滞在していた頃に書かれたものが多いので、必然的に政治的な内容が多く、そうしたものはあまり印象に残っておりませんが、その他の、優秀な競走馬の競売を巡る話や、狂犬病にかかった子どものために、見ず知らずの人達が結束してアメリカからベネズエラまで血清を運ぶ話なんかは今新聞に載っていても面白く読めると思います。
 まぁしかし、南米ってガルシア=マルケスの作品世界そのままなんだなぁ…。家出した男がインディアンに囚われ、四年後何とか逃げたしたものの、色んな事情により家族の元に戻ったのは三十年も経ってからだったという「杭に繋がれて四年」という話は、創作なんじゃ? と思ってしまうくらい現実離れしています。でも、そういうこともありそうと思えてしまう、ラテンマジック。
 ガルシア=マルケス作品の土壌に興味のある人にオススメです。
 
Posted by pareidolie21
その他の本 / 23:53 / comments(0) / -
物語の作り方(ガルシア=マルケス他/岩波書店)
 ガルシア=マルケスがシナリオライターたちとディスカッションしながら、テレビドラマ用の脚本の原案を作っていく「お話をどう語るか」、同じくシナリオライターたちとそれぞれが考え中のアイディアについて語り合う「語るという幸せなマニア」の二章からなる、ドキュメンタリー。

 タイトルの通り、物語の作り方についてひたすら話し合われているのだけれど、よくある「小説の書き方」のようにただ理論を説明するようなものではなく、徹底的に実践あるのみの内容。ガボ(ガルシア=マルケスの愛称)は、物語が行き詰った時に「こう持っていったらどうなる?」と、一見突拍子もないが経験に裏打ちされた提案をして物語を形作っていく。何だか町工場の熟練職人のようだった。
 「お話をどう作るか」の方が、話の様子がどんどん変わっていくので面白かったかな。ガボの一人勝ちのように思えなくもないが、物語を作る楽しさと辛さが伝わってくる。それにしてもガボ、話変えすぎだろって突っ込みたくもなる(笑)。「サマーラの死 供廚函屮轡瀬螢△肇戰螢鵐澄廚気になる…実にガルシア=マルケス的物語。
 「語るという幸せなマニア」は、持ちこまれたアイディアがもう既に出来上がりかけているものが多かったせいか、「お話〜」ほど劇的に変わることなく物足りなかった。ただ、最後の「『苺とチョコレート』の奇跡」の章は中々興味深い。同じ物語でも、小説と脚本の根本的な違いについて知ることが出来る貴重なエピソードである。

「原稿用紙一枚で語るなり、要約できないようなら、その物語には余分なものがあるか、何かが欠けているということなんだ」(P36)
「最初のイメージがどのようなものであっても、何か語りかけているから、大切にすることだ。たいていの場合、それが何かを語りかけるのは、イメージの中にその何かが内包されているからなんだ」(P120)
「状況は三十六通りあると言われるけれども、実際はそんなにないんで、人生と愛と死の三つだけだよ」(P250)
Posted by pareidolie21
その他の本 / 00:34 / comments(0) / -
女盗賊プーラン 上・下(プーラン・デヴィ/草思社)
 インドの古い因習が残る村に生まれたプーラン・デウィ。低カーストの身分に生まれついたことが、彼女の人生を狂わせていく…。貧しさ故に11歳で嫁がされ、凄惨な虐待を受け、離縁されて村に戻ってくると白昼の下で辱めを受ける。人間以下の扱いを受けていた彼女は、皮肉なことに、誘拐された盗賊団の中で初めて人間らしい扱いを受けるのだった。
 盗賊となったプーランは、かつて自分を虐げ辱めた男たちに復讐をしていく。しかし、彼女はまたしても過酷な運命に翻弄される…

 以前から何となく気になっていましたが、勇気を出して読みました。
 …打ちのめされる。これが現実にあったことだと思うと、ぞっとして涙も出ない。しかし、こう言っていいものかためらうけれど、もの凄く読ませる内容だった。読み始めたらページを伏せるのが難しい本だった。
 読んでいると、プーランの怒りがこちらに乗り移ってきそうで恐ろしかった。でも、怒りの感情もまた生きるエネルギーなのだと感じた。怒り、復讐心こそが、彼女をこの状況でも生かし続けたエネルギー源であった。憎しみ、復讐は何の解決も生まない…というのは理屈では分かっていても、彼女のようにあまりにも絶望的な状況に置かれて、尚生きなければならないとしたら、さてどうだろう? そんなことを悶々と考え続けてしまう。
 内容が内容なので、誰彼なく薦められる本ではないかもしれないけれど、興味があれば読んで欲しい本です。

 盗賊をしながらかつての敵たちに復讐していくプーランは、最後は警察に投降して十数年服役したのち、釈放されてからは国会議員となった。しかし、この本を出版して数年後に暗殺された。
Posted by pareidolie21
その他の本 / 00:07 / comments(0) / -
101人の画家(視覚デザイン研究所)
 古今東西の画家101人の生涯を、ユルーイ漫画で親しみやすく紹介した美術入門書。

 店のフェア台で見つけて、気になったので図書館から借りてきました。
 101人の画家の生涯を、一人二ページのユルイ漫画で紹介。結構ボリュームあるので、一気に読むより気が向いた時にちまちま読んでいくような本です。
 作品の解説はそれほど詳しく書かれていないですが、画家の生涯において作品がどのように描かれたかを知るにはいいかもしれません。ただ、全体的に初心者向けなので、突っ込んだ解説を期待して読むとハズれます。
 画家って奇人変人が多いのかしら〜と期待して読んだのですが、期待をハズさぬ人たちばかりで楽しめました。でも、まっとうに生きた人も結構いました。あと、案外人間臭い人たちが多いです。霞食っては芸術は出来ないのが現実なんだろうなぁ。
 もう少し作品解説があっても良かったかな。それと、西洋絵画に偏り過ぎているのが難(東洋からはフジタと葛飾北斎くらいしか紹介されていないのは寂し過ぎる…)。
Posted by pareidolie21
その他の本 / 23:31 / comments(0) / -
ナショナル・ストーリー・プロジェクト〈2〉 (ポール・オースター/新潮文庫)
 オースターがラジオ番組を通して全米のリスナーから募った、日常生活でのちょっとした偶然、不思議な話、奇跡的な出来事が二百件ほど収録されている。

 「事実は小説より奇なり」を地で行くエピソードも多いけれど、別にこれといって驚くようなところのない話も結構ある。でも、この話を送ってきた人にとっては、その出来事は今まで忘れられずにいて、そしてこれからも忘れずにいるのだろうと思うと、その人を形作っているものの一部を垣間見たようだった。誰もが持っている、何の変哲もない日常を生きていくための、特別な一瞬の物語。
Posted by pareidolie21
その他の本 / 01:29 / comments(0) / -